名古屋大学環境医学研究所

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環研について

所長挨拶

環境医学研究所は、1946年に名古屋大学の附置研究所として発足して、その歴史は約80年に及びます。昭和-平成-令和と変遷する各時代の研究の潮流や社会的要請などに基づいて、研究所はそのミッションを発足当初の「環境医学に関する学理及びその応用研究」から、「宇宙医学など特殊な環境下の健康科学」、さらに「近未来環境がもたらす健康障害のメカニズム解明と予防法開発」と変革しながら、活動してまいりました。

  現在の基幹研究分野は、神経系、代謝・内分泌、ゲノムを重点研究領域とし、人体の恒常性維持機構やその破綻による疾患の発症メカニズムなどに関する基礎医学研究や橋渡し研究に取り組んでいます。「環境医学」という言葉から現在の研究所の実像は想像しにくいかも知れませんが、「体内環境」を理解して、その維持機構を解明することを通して新規治療法の創出に貢献する医学研究所であるとご理解いただきたいと思います。現在の研究所は8つの基幹研究分野に加えて、東海国立大学機構内の医薬系部局との連携研究・産学連携研究の推進を通じて次世代研究者育成・研究力強化を担うMIRAIC-未来の医学研究センターおよび産学協同研究センターにより構成されています。液性因子や神経シグナルを介した様々な臓器の間の複雑な相互作用や、疾患発症における臓器間相互作用の破綻が、近年、クローズアップされています。当研究所においては、各分野のエキスパートが共同研究等を通じて、ストレスへの曝露や生活習慣のような体外環境のみならず、様々な臓器やシステムから成る人体を「体内環境」という観点からも包括的に理解し、疾患の克服に貢献することを目標に研究を展開しております。

  国立大学のなかで研究所は、最先端の研究に専念できるという学問的自由を与えられていますが、同時に、社会との連携、研究成果の社会還元による社会貢献も強く求められています。また、少子高齢化社会が加速する本邦では、加齢に伴う疾患、ストレス性疾患の増加など多くの医学的・社会的課題を抱えております。これらの課題の克服に貢献すべく、医学系研究科の一員である私どもは学内および東海国立大学機構内の医薬系部局との研究連携を強めるとともに、産学連携、国際連携、若手研究者の育成等を通じて研究所のアクティビティーを常に高いレベルに維持するよう努めております。

  国立大学法人をとりまく財政事情は年々厳しさを増しておりますが、私どもは、最先端の研究成果を常に世界に発信し、社会に還元することを通じて、その役割を果たすべく日々努力してまいりますので、ご支援とご協力をお願い申し上げます。

環境医学研究所長 林 良敬

研究所の理念・目標

人類が生活する環境は20 世紀の後半から加速度的に変貌し、健康への影響が一層深刻となり、複雑化してきている。環境医学研究所は、その使命を「人間と環境の関わりを医学と生命科学の面から研究することにより、人類の幸福に貢献すること」として明示し、目標を「我々をとりまく急激な社会環境と自然環境の変化に対する人体の適応機構と、その破綻によっておこる疾患の発症機序の解明と予防・治療法の開発」として掲げた。

  人間を中心とした視点から捉えた「環境」には、人間を取りまく「社会環境」、「自然環境」と人体に内在する「体内環境」がある。具体的に、「社会環境」の変化として、高齢化、ストレスの増加、「自然環境」として、放射線等の環境変異原などがあげられる。一方、人体は、臓器、細胞、細胞内小器官など様々な階層から構成され、これらの協調的な連関によって生体の恒常性が維持されていることから「体内環境」として、人体を一つの環境と捉えることができる。そして、これら「環境」の異常や破綻が健康障害や疾病をもたらす。

  環境医学研究所は、特に「体内環境」を維持するメカニズムや、その異常や破綻によって起こる精神・神経疾患、生活習慣病、ゲノム不安定性疾患等の発症機構を明らかにして、有効な治療法を開発するため、医学、生命科学系部局を中心とした他部局との学内連携を通じた基礎医学・生命科学研究を推進し、さらにその成果に基づいた創薬研究を目指す。

研究所の歩み

1943年(昭和18年) 名古屋帝国大学の附置研究所として、航空医学研究所が設立された。
1946年3月(昭和21年) 新制名古屋大学の発足に伴い、同大学附置研究所となる。
1949年5月(昭和24年) 新制名古屋大学の発足に伴い、同大学附置研究所となる。
1960年5月(昭和35年) 航空医学部門が増設された。
1964年2月(昭和39年) 研究部門の名称を、第1部門(神経・感覚)、第2部門(代謝・内分泌)、第3部門(呼吸・循環)、第4部門(病理・胎生)、第5部門(航空医学)に変更した。
1966年12月 (昭和41年) 新庁舎に移転した。
1967年6月(昭和42年) 第6部門(航空心理)が増設された。
1979年5月(昭和54年) 研究所南館が増設された。
1991年4月(平成3年) 研究所の改組により、小部門制から大部門制に移行した。第1部門:分子・細胞適応部門(内分泌・代謝分野、発生・遺伝分野)、第2部門:器官系機能調節部門(神経性調節分野、循環器分野、液性調節分野)、第3部門:高次神経統御部門(平衡適応分野、自律神経・行動科学分野)。また、附属施設として宇宙医学実験センターが新設された。
1994年3月(平成6年) 研究所北館が増設された。
1996年10月(平成8年) 第3部門:高次神経統御部門の2研究分野の名称を、視覚神経科学分野と自律神経分野に変更した。
2001年4月(平成13年) 第3部門:高次神経統御部門自律神経分野の名称を神経免疫部分野に変更した。
2004年4月(平成16年) 国立大学が法人化され、国立大学法人名古屋大学附置研究所となる。研究所の主要なミッションを、「近未来環境がもたらす健康障害のメカニズム解明と予防法開発」に変更した。
2004年10月(平成16年) 寄附研究部門:生体情報計測・解析(スズケン)部門を設置した。
2005年1月(平成17年) 第3部門:高次神経統御部門に脳生命科学分野を設置した。
2006年4月(平成18年) 新たなミッションを実現するため、研究組織の再編を行った。従来の3研究部門を2研究部門へ再編した。ストレス受容・応答研究部門(神経系分野、内分泌分野、免疫系分野)、生体適応・防御研究部門(脳機能分野、発生・遺伝分野、心・血管分野)。附属宇宙医学実験センターを廃止し、附属近未来環境シミュレーションセンターを設置した。
2009年4月(平成21年) ストレス受容・応答研究部門内分泌系分野の名称を分子シグナル制御分野に変更した。
2010年3月(平成22年) 寄附研究部門:生体情報計測・解析(スズケン)部門を廃止した。
2010年9月(平成22年) 生体適応・防御研究部門にゲノム動態制御分野を設置した。
2012年10月(平成24年) ストレス受容・応答研究部門分子シグナル制御分野の名称を病態神経科学分野に変更した。
2014年4月(平成26年) 産学協同研究部門:薬効解析部門を設置した。
2015年4月(平成27年) 附属近未来環境シミュレーションセンターを廃止し、附属次世代創薬研究センターを設置した。
2015年7月(平成27年) ストレス受容・応答研究部門免疫系分野の名称を分子代謝医学分野に変更した。
2019年4月(平成31年) 生体適応・防御研究部門心血管分野の名称を内分泌代謝分野に変更した。
2021年4月(令和3年) 附属次世代創薬研究センターを附属MIRAIC-未来の医学研究センターへ改組した。

パンフレット・年報

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